ここ数日間感謝祭休日モードでさぼってしまったが、同時にまた今後のネタを仕込むための読書なぞもしていた。
その中で読んでいたのが、先日梅田望夫さんが書いていた「変化を察知する予言者を社内に見つけろ」という話ともちょっと関連したハーバード・ビジネス・レビュー11月号に掲載された「Be Prepared」という論文。
生憎、購読していないと読めないようだが、内容としては、「イノベーションのジレンマ」でいうところのDisrputive Technologyなども含む技術変化や競合他社の動きに関し、どうやって早期警戒システムを構築するか、というものである。
... Fully two-thirds of 140 corporate strategists polled admitted that their organizations had been surprised by as many as three high-impact events in the past five years. Moreover, the vast majority - a staggering 97% - stated that their companies had no early warning system in place.
アメリカの企業において、こんな状況である。この論文では、情報が氾濫する中で、どうすれば効果的な早期警戒システムを作れるか、について論じている。その中でもとりわけ面白かった(そして梅田さんの紹介したアンディ=グローブの考え方とも共通するのだが)のは、昆虫が自分たちのおかれた環境に関する情報を察知し、群れ全体にそれを伝えるメカニズムに倣った「swarm intelligence」の活用である。
One large telecommunications company, for instance, uses swarm intelligence technlogy (named for the way insects pass along information and modify their behavior to fit the environment) to capture what its many employees are hearing and seeing. (中略)The swarm intelligence technology turned hindreds of employees into informal sentries, warning the company to react to changing competitive conditions.
日々顧客と接し、競合他社の動きに触れる機会の最も多い現場の社員が収集してくる情報や知恵というものはとかく経営陣に伝わることなしに埋没してしまうものであるが、そういう組織の「末梢神経」の発する信号こそが大事であり、そういった情報や知恵を記録し、重要度を判断するための仕掛け作り(上の通信系企業ではイントラネットにそういう情報を載せ、それに対し社員が投票する、という仕組みを採用している)が重要である、という主張がなされている。グローブ流に言えば、最前線の社員がすべて「カサンドラ」となり、ミツバチが蜜のとれる花畑を群れに伝えるように、重要な情報を速やかに組織全体に伝え、マネジメントが即座に反応できるような体制を作れ、ということか。
そういった仕掛けをサポートするツールとして、イントラネットやナレッジマネジメントといった「上から与えられる」ツールを用いる、というのが通常の考え方であろうが、好奇心の強い、見識ある社員(「カサンドラ」になりうる人材)に好き勝手に、社外の人と交流するようなblogをつけてもらい、内容を組織的にモニターし、そこから出てくる様々なシグナルを読み取る、という「下からの」自然発生的なmarket intelligenceをプロモートするような環境を作る、という手もあるのではないか、と思う。さらに言えば、そういう「自然発生的」システムが真に有効に機能するためには、組織の枠を超えて、自分の専門分野に関する幅広いネットワークの築ける人が「会社の仕事のため」という動機でだけでなく、会社を離れ「自分の価値を高めるため」というある種selfishなメンタリティをも持って日々能動的に社外のネットワークを築き、情報収集に努めなければいけないのではないか、とも思う。そうなると、「会社の利害」と「個人の利害」が一致することを前提とするのでなく、「利己的」な人材を組織の目的に適うよう活用する、という会社経営のパラダイムシフトが要求されるので、日本企業にとっては非常に難しい課題となってしまうのだろうけど。
http://book.asahi.com/review/index.php?info=d&no=4305 で引用されている山口瞳の言葉に相通ずるものがあるような話ですね。
Posted by: びっぐ | December 02, 2003 at 09:22 PM
むらどん、元気ですか?今日は寒くなりました。最近、日本の12月にしては暖かい日が続いていたんですが、、、
さて、いよいよアメリカ行きが2週後となりました。すごい楽しみです。むらどんともお会いできるといいですね。今回は超美人の淑恵ちゃんもいっしょに行きますよ~。 サユリ
Posted by: 池田さゆり | December 07, 2003 at 03:53 PM