先週はインプット過剰のアウトプット過小状態であった。
本を4冊読み、映画を3本見、SFまで出かけて友人と会ったり、パーティに2回行ったり、ナパまで出かけたりしていたのに(もちろん仕事もしていた)、ポストは飛び飛びで3回。このままずるずると書かなくなり、「経験と情報のブラックホール」になるのは如何に簡単であることか。
そんなことを考えたからではないが、今日はblog書きにまつわるお話。
最近周りの人に「blog書くのって面白いよ、世界広がるよ」などと言っているのだが、そういう会話の中でしばしば聞かれるのが「時間がない」「作文が苦手」「ネタがない」「仕事絡みのことでは書きたいことがいっぱいあるのだけど、会社から睨まれるのでは」といった発言である。最初の3つに対しては:
*blog書きに価値を見いだすのであれば(面白いと思うのであれば)時間は作れば良い
*採点されるわけではないから普段Eメールで書くような文章で良い
*「大勢にウケる」ことを目的とするのでなければ、ちょっとでも面白いと思ったことについて備忘録をつけるつもりでこまめに書いていれば読んでくれる人が登場するものである
などと言ってはいるのだが、最後の「仕事がらみ」についてはマイクロソフトの契約社員がblogに仕事中に見たことを書いてクビになったという話もあるので、あまり軽々しく助言もできないな、と思っていたら先週、以前ちょっと紹介したマイクロソフトのRobert Scobleのblogを経由して、「Persuading Bosses to Allow Bloggs」というblogを発見した。上司に対し、どうやって自分の仕事がらみのblogを認めさせるかについてあちこちで書かれた記事について網羅的に紹介しているので、じっくり読んで「こういうメリットがある」という議論を組み立てる役に立てていただきたい。
私は先日も書いた通り、「社員が会社とは関係ない利己的な動機で積極的に外部と交流するblogを市場変化の早期警戒装置として活用することができるのではないか」と思っている。Blogが対話として有効に機能するのは、「quid pro quo」の原則で、自分からユニークな情報を発信して、それに対する意見なり感想なりを得ることができる舞台を設ける必要がある場合なので、社員に世の中に対するアンテナを貼らせるつもりでBlogを始めさせるのであれば、自社内の情報をある程度開示する覚悟がなければならないのだろう、と思う。そうなると、機密情報をばらさない程度に、社外の人の興味を惹きそうな話を書くというかなりデリケートなバランスを要求されるわけだが。
そういう意味では、Scobel氏のblogなどは良い例になるのではないだろうか。同氏はマイクロソフトの社員で、Longhornのマーケティングを担当している人なのだが、この人のblogは今Longhornに関しどんなことが行われているかについてリアルタイムで語り、それを通じて社外の人と様々なトピックについて対話を実現できている。「文系」の私としてはソフトウェア開発の日々の状況が伺い知れるので、ちょくちょく見に行くようにしている。
このScoble氏が書いた、「The Corporate Weblog Manifesto」は、自社の仕事に関するblogを始めるにあたっての「20か条」を記していて、非常に面白い。特に、第2条「Post fast on good news or bad」が良い。
Someone say something bad about your product? Link to it -- before the second or third site does -- and answer its claims as best you can. Same if something good comes out about you. It's all about building long-term trust. The trick to building trust is to show up! If people are saying things about your product and you don't answer them, that distrust builds.
趣旨としては、自社の製品の悪口(または賞賛)を書いているblogを発見したら、積極的にリンクして、きちんと対応しろ、そういうオープンな考えをに基づいて対話を行うことにより、自社にとって重要なことを言ってくれるような人との信頼関係に基づいたネットワークが構築される、ということである。社内の知恵だけでは限界があることを認識している企業であれば、こういった姿勢で「外部の知恵・知見」を活用するような仕掛けを作ってみても良いと思うのだろうが、どうだろう?
社内blogを作ろうと思っている人、会社としてblogをどう活用しようと考えている人はぜひ上に紹介したものを読んでいただきたい。その上で、よろしければ私のblogをディスカッションの場にしてもらえれば非常に嬉しい。
しかし、マイクロソフトはCEOバルマーの肝煎りで社員のblogを奨励している、と言われているが、その一方で上のような「クビ」事件を起こしているあたり、「らしい」と思ってしまうのは私だけだろうか。
これで少しは「ブラックホール」で吸い込んだものを吐き出せたかな?
ではまた明日。
昨日はどうも!早速来てみました。
さすがなおさんのblog・・・いっぱいだ・・・
日本帰国前で膨らんでいる仕事を片付けてから、ゆっくり読みますね。
ちょうど仕事でイントラBlogを企画してたところ、参考になります。
Posted by: や | December 08, 2003 at 11:16 PM
ご挨拶の方が遅くなってすみません…!重ねて、リンクありがとうございました!
「社内Blogの20か条」面白いですねぇ。
Bloggerデビューは社外での方が先だったのですが、あまりに面白いのでイントラネットでも、と現在社内版もパイロット走行中です。「常に本当のことを、分からなければ分からないと言う」というのはなるほどなぁと思いますし、その他にも、激しく頷かされるところも多く(If your life is in turmoil and/or you're unhappy, don't write あたりが)参考にしたいと思います。
Posted by: | December 09, 2003 at 09:05 AM
あれ~?なぜか匿名投稿になっていますが、↑のコメントは私Tomomiでございます。失礼致しました。
Posted by: Tomomi | December 09, 2003 at 09:07 AM
実に興味深い内容ですね。波多野blogの波多野です。小生も前社においても、その過去においても、会社のことを考えつつ、スレスレの状態で、業界紙とか各種の雑誌などの書いてきました。出版社の要求はいつも具体的な事例や事実を要求してきます。ある種の決断を持っていつも書いていました。ある社員がどことわかる内容を書いて、そのクライアントからクレームが来たこともありました。
現在、私のblogはビジネスブログを目指して、日夜努力をしていますが恐らく前社に在籍していたら、このblogには書いていないでしょう。絶えず恐怖を抱きながら執筆することは文章自体が萎縮し、オープンに自分の考えを述べることが出来ないからです。
独立してから、その呪縛が解け、自分自身で責任を持った内容を書けるようになり、その内容が変わってきたと思います。言ってはならないこと、弱点をさらさないこと、マーケティングの鉄則である強みをアピールして、弱みをカバーする、という戦略から外れることにもなるでしょう。
20か条のように、ある一線を引いて自社の販促やアピールにつながるような書き方もできると思うのですが、きっと役員会議でOKが出るような会社は少ないのではないか、とも思うのです。
興味あるテーマでした。参考になりました。
by hatano
Posted by: 波多野 | December 10, 2003 at 08:38 PM
ちと昔の記事ですが、こんなものを見つけました(注:登録[無料]が必要かも)。
http://it.nikkei.co.jp/it/njh/njh.cfm?i=20021028s2000s2
ご参考まで。
Posted by: びっぐ | December 10, 2003 at 08:56 PM
波多野さん:
コメントありがとうございます。「まず初めに会社ありき」で個人の活動が規定される日本と、「会社は個人の活躍のためのvehicle」であり、「会社も人を選ぶが、人も会社を選ぶ」文化の浸透している米国では当然社員blogを受け入れる土壌が違うのだろうな、と思います。波多野さんのサイト、まだ時間が無くて読めていないのですが近々じっくり読ませていただきます。
Posted by: Naotake | December 11, 2003 at 11:28 PM