本当に久しぶりですが企業ブログの話題です。しかもこれまた久々のScoble経由です。
格安/高サービスという一見相反する特質を売り物にし、かつ独特のビジネスモデルと経営哲学でこの20年不況続きの旅客航空業界で一人気を吐く会社サウスウェスト航空がついに企業ブログを始めました。
題して"Nuts About Southwest"(リンク)。これまた有名な、機内食サービスの無い同社が唯一機内で配る「食物」であるピーナッツと"Nuts about ~ (~ に夢中)"をひっかけています。サイトデザインもピーナツの袋を前面に出していますね。
まだ1週間ほどしか経っておらず、エントリも一握りしか書かれていませんが「楽しい会社、楽しい社員」を標榜する同社の社員が数名で「会社そして仕事の面白さ」について語る、という企画のようです。まだマーケティング関係者等しか書いていませんが、これからフライトクルーや整備員といった「現場」の社員も登場するようです。
また「対話」を促進したいと謳っており、コメントができるようになっています。ただ、そこはそれ「企業」のブログですのでいかなサウスウェストと言えども締める所は締めています。User Guideすなわち「利用の手引き」を読むと:
This is the point where we insert the “fine print” and discuss the
guidelines for posting. The Southwest Blog is starting out as a
moderated site because we want to ensure that everyone stays on topic.
We would LUV for you to post your thoughts, comments, suggestions, and
questions, but when you post, make sure that they are of general
interest to most readers. Of course, profanity, racial and ethnic
slurs, and rude behavior like disparaging personal remarks won’t be
tolerated nor published. Even though our blog is moderated, we pledge
to present opposing viewpoints, and we will strive to keep it
interesting, diverse, and multi-sided. Our bloggers want to engage in a
conversation with you, but not every post will receive a response from
us.
注:LUVというのはサウスウェストのコールサイン、由来は同社発祥の地ダラスのLove Field空港そしてLove(愛)に引っ掛けています。
要点だけ意訳すれば:
- トピックから逸れないように、当社でコメントをmoderate(=司会)します
- 不適切な言葉、人種差別的な発言、失礼な言動は許容せず、発行もしません
- 当社で司会はしますが、様々な観点からの、対立するような意見も取り上げ、このブログが面白いものとなるようにします
- 当社の社員ブロガーは読み手の皆さんと対話したいと思っていますが、全てのコメントに返事をすることはできません。
ということになります。ただ、モデレートされているとは言っていますが、先程一つ自分で書いてみたところ(名前とメールは必須)何のチェックも無しにそのまますんなり掲載されましたので、一旦社員がコメントを読んでから発行するかしないか決める、ということはしていないようです。
またこのユーザーガイドには「カスタマーサービスについてのお問い合わせ、ご要望はこちらのブログでは受け付けておりません。」と書いてあり、連絡先として電話番号を記載しています。
そんな風に一応予防線的なことはしっかりやっていますが、開始一週間で、既にカスタマークレームに属する、色々と紛糾の種になりそうなものが登場しています。
例えばこの記事のコメント欄には同社の「乗務員の主観的判断で、身体の大きすぎる人が乗ろうとするとその場で二人分の料金を徴収する」というポリシーに対する抗議がコメントとして掲載されています。まだ同社からの回答めいたものはありませんが、これが今後どうなって行くのか、気になる所ですのでしばらくフォローしてみたいと思います。(Kryptoniteの自転車ロック事件みたいですが…我ながら懐かしい)
ちなみにこちらではピーナッツアレルギーの子供を持つ親が「ピーナッツの機内サービスを止めて欲しい」と書いたら、「当社の予約システムでは、アレルギーをお持ちの方はお申し出いただくことができます。そんなお客様が乗った場合はピーナッツは出しません」という回答が帰って来ていました。さらにそれに対して「一人の客のために機内全体にピーナッツを出さないのはおかしい、その客の周囲だけ出さなければ良い」という客の意見も出ています。
こういった議論が全て解消されるかどうかは疑問ですが早くも結構な盛り上がりを見せています。
サウスウェストという会社についてはあちこちでその面白さとスゴさについて口頭では語っているのですが(結果、対して乗っていないくせに同社の伝道師になっています)、とかく「面白い会社、人が生き生きと働く会社」として発想や人材、そして企業文化のユニークさで成功しているような会社のように見られるのですが、実はその一方では「徹底的合理性」をとことん追求しています。しかも、そういった対立概念が単に(通常、表裏として)同時存在しているのではなく、「成功の仕掛け」として効果的に組み合わさっています。
しかも、この「仕掛け」が最初っから狙ってデザインされたものではなく、同社の初期の体験の中で苦しみながら、いろんなことに対処していく中で編み出され、やがてその有効性により良い意味で一人歩きして「仕掛け」として磨かれ、根付いて行った、というストーリーは何度読んだり、聞いたりしても感じ入ってしまいます。下手なフィクションより面白いです。
黒澤明の「椿三十郎」で「良い刀は鞘に入っているものです」というセリフがありましたが、サウスウェストのことを表すにもぴったり来る言葉だと思います。
そんな同社のファンであり、そして企業ブログについて散々書いて来た自分としては、このブログもそれなりにしっかりとした狙いを持って、一時的なものではなくじっくりとやっていくつもりでやっていると思いたいものです。もっともこれが同社一流の「計算された実験」である可能性も否定はできませんが、逃げも隠れもできないウェブの世界では「実験」にもそれなりの覚悟が必要です…。
上述の「アメリカンサイズの乗客」問題についても「対立する意見」として掲載はしても「答える余裕が無いので」「それはカスタマーサービスへ」とこのブログで知らん顔をすることだけはお願いだからしないで欲しいものです。
本当に。
【追記】Ask Naotake!ブログ、こちらで前回書いた通りにポッドキャストのshownotes以外のエントリも書き始めました。
【独り言】4.26時点のmemeorandumで見ると、まだ2人のブロガーが取り上げているだけでスコーブルのものはまだ見えていませんが、これは時間差の問題なのか、それともSouthwestのブログにリンクするだけでは引っかからず、ブロガー間でリンクしあって始めて登場するのでしょうか?
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