このPixar+Disneyの新作、邦題は「カールじいさんの空飛ぶ家」だそうですが、このタイトルだと、何だか昔の魔法使い系の絵本のようなイメージが浮かんでしまい、良くない意味で「メルヘンチック」な映画だと思われてしまいそうなのが残念です。この邦題に縛られることなく、大人にも子供にもそれぞれ感じ入るところは違えど楽しめ、かつ心温まる作品だと思いますので、ぜひご一見を。
もっとも、私は最初宣伝を見て「何だかメタボな子供が出ているなあ」というのが気になっているうちに観に行きたくなった、という不純(?)な動機で観に行ったのであまり偉そうなことは言えませんが…。
本作を見て頂ければご理解頂けるとは思いますが、「Up(上へ)」という原題には「旅立ち」、「解放」、「成長」といったニュアンスが込められていると思います。ネタバレにならぬようにいささか抽象的に申し上げれば、この映画は主要登場人物のそれぞれが自分を取り巻いてるもの、縛り付けられているもの、から解き放たれる物語なので、シンプルでありながら実にうまいタイトルだなあ、と見終わって思いました。
ディズニー精神がどうのこうの、というと昨今少々微妙な領域に足を踏み入れてしまいそうですが、私がこの映画をFacebook上でほめたことにコメントしてきた友人の言葉を引用させて頂きますと(Thanks Ray!):
(ピクサーは、ウォルトディズニーのモットーである「笑いには必ず涙が伴わなければならない」を守って作品を作っている。ピクサー以上に、アニメーション映画で「人間」を描いているスタジオは無い。早く「Up」が見たい!)
先日も「特撮・CGはもはや映画の差別化要因にはならない」と書きましたが、ピクサーのCG技術がどうのこうの、というのはもはや所与のもので、もっと言えばお金と時間さえかければ誰にも真似できるものですが、ピクサーをピクサーたらしめているのはそうした技術を「まず『いいお話、考えたお話』があって、それを最大限に生かす実写ではない「デフォルメ」した世界を実現するためのツールとしている」姿勢なのだと思います。さらに言えば、その「デフォルメ」がきちんと現実味のある人間描写の「延長線上」にあるからこそ、上にも書いたように感じいるところのある映画になったのでしょう。
特に「インクレディブルズ」やこの「Up」はその気になれば実写映画として、人間の役者を使っても作れた話だとは思いますが、こうしたピクサー的姿勢により、CGアニメーションのショーケースではない「敢えてアニメで作ってこそ」とでも言うべき生き生きとした作品になったのだなあ、と思います。
ちなみに、冒頭で書いた「メタボな子供(アジア系、という設定、声をあてているのは日系アメリカ人の子役)」はアニメーターの韓国系アメリカ人Peter Sohn氏がモデルになっているそうです。こちらに写真があります(中央)。ピクサー作品では制作スタッフが声を当てることも良くあるのですが、こういう「スタッフ参加型」なのも社風でしょうか。ピクサーの声優はこうした「スタッフ」ばかりではなく、それほど知名度は高くはないがベテランの演技派俳優を使う傾向がありますが、よそのアニメスタジオが有名俳優を声に使ったりするのとは好対照です。
ぜひご覧頂ければ、と思います。
私もUp見て来ました。いや、良い話でした。3Dで見れたのもナイス。
メタボな子は実は日系人の男の子が演じているらしいですね。
Posted by: Naoki | June 03, 2009 at 09:36 PM
3Dで見損ねたのは残念でしたが、そういう映像ギミックはおいといて、本当に良い話でしたね…。
そう、あの男の子は日系人の子供で、しかもお兄さんがオーディションに来たのにくっついてきたところを見いだされたそうです。あの熱心さが空回りしている感じがなんとも良かったです。
Posted by: naotake | June 03, 2009 at 09:56 PM