この写真は秋口に撮ったナパの某ワイナリーからの風景です。さすがに今の季節はこんな天気でもなく、葉っぱも青々とはしていません。
本日はまたワインについて語る際の英語の話です(前回:シャルドネ編)。取り上げますのはジンファンデル。Wikipediaの日本語ページでは「その他の品種」として他の品種とひとくくりにされていますが(英語ではしっかりと独立したページです)、カリフォルニアではワイン用ブドウの作付面積の10%を占めるブドウです。発音は「ズィンファンデル」で、冒頭の「ズィン」に力アクセントを置き、リズミカルに言うとアメリカ人ぽいです。しばしば「ズィン(Zin)」と略されます。
他のワイン産地ではこのブドウを使ったワインは作られていないこともあり、カリフォルニアの固有種だと勘違い(私も含め)されておりましたが、実はクロアチアからイタリアを経由して伝わって来た(イタリアではPrimitivoと言うそうです)ものだということがDNA調査の結果判明しております。ただし、アメリカ、それもカリフォルニアにおいてのみこれを使った個性的かつ美味(そして時には高価格)なワインを作っている、という意味では「カリフォルニアのブドウ」なのでしょう。
ではどう個性的なのかと言えば、いわゆる「赤ワイン」の標準的な味の要素である「酸味」「渋み」よりは「ガツンとくる果物の味」、換言すれば、いわゆるフレッシュな感じの「フルーティ」ではなく、ジャムとかコンポートにした果物特有の濃縮された果物の味、ということになります。中には「果物」よりは「野菜」の味が全面に出て、キャベツの絞り汁のような青臭さの感じられる味になったものもありますが…。この味はこの品種特有の高い糖度に由来するもののようです。結果、アルコール度数も高めになりがちで、テイスティング時には最初に「つーん」とくる刺激臭が先行する場合もあります(特に某有名Rワイナリーのジンファンデル)。
こんなジンファンデルの味を表現する言葉は、やはりそれにふさわしいものです:
- black fruit = 特にどの果物、というよりは以下に上げたような「皮の色の濃い果実」の総称、みたいなものです
- cherry = まさにあのアメリカンダークチェリー、もっと言えばアメリカ人がなぜか好きな人工チェリー味です
- berry = ブラックベリーやブルーベリー、しかもジャムにしたものだと思ってください
- plum = 熟しつくした酸味の消えた状態のあの味です
- currant = 黒スグリ(カシス)ですね
- raisin = まさにそのまんま、という感じもしますが、「酸味のあるレーズン」という感じは良くします
- prune = あの壜詰めのあのプルーンの味です
また、上で「加工した果物」と書きましたが、まさにそのもの、という表現で'jammy(ジャムっぽい)"というのがあります。新品のジャムの瓶の蓋を開けた時に漂うあの香り、口に含んだときの濃縮された果物の味、という感じでしょうか。
このjammyと似ているのですが、もっと強烈な果実味をもったものを表現する場合、しばしば"fruit bomb(フルーツ爆弾)"という表現が使われます。まさに上に挙げた濃い果物の味がそのまんま、口の中で爆発するように広がる、といったイメージですね。もっとも、fruit bombはあまり好意的な言い方ではないような気がしますが…。
と、こう書いているときわめて甘ったるい、洗練されたところのないワインのような印象を受けるかもしれませんが、ジンファンデルの美味しいものは、こうした果物くささを上品に、絶妙な酸味と共にまとめあげて、しかもアルコール度数の高さをあまり感じさせない実にコクのあるワインとしなってしまうのが不思議です。
カベルネソービニョンがタンニンと酸味がまず全面に来て、そのあとにブドウの味が出てくるとすれば、ジンファンデルはブドウの果実味から入ってそういう「ワインぽさ」があとからやってくる、と言っても良いかもしれません。そういう「後からやってくる」ものの中には、もちろんタンニンの渋みや酸味もあるのですが、black pepper(黒こしょう)、clove(チョウジ)、tobacco(タバコ)、といった癖のあるものがあるのがこれまた「らしい」ところですが。
では、ここでまたワイナリーでのテイスティングっぽい例文を一つ。まずは臭いを嗅いで:
(うん、ジャムっぽいねぇ。ラズベリーとブラックベリーがまずぐっと来るけど、つんとしたアルコール臭は抑えられてるね)
そして一口含んで、
Wow, lots of fruit. It now tastes more prunes and raisins, but still has that nice fresh berry aroma - and I start sensing some spices, say, cloves? Anyhow, this is definitely not a fruit bomb - it's got a lot of complex layers to it.
(おお、果物の味満載だ。プルーンやレーズンの味がしてきたけど、同時にフレッシュなベリーの香りもしてる。そしてその後に来るのはクローブかな?いずれにせよ、これはただのフルーツ臭いワインじゃなくて、とても奥行きのあるワインだよ)
例文にしてもなんだか大げさかな、という気もしますが、時に思わず感嘆の声が出て口中のワインを噛み締めるように飲み干すようなものにお目にかかるることもあれば、一口含んでそっと出し、みたいなワインに出会うこともあるのがジンファンデルの面白いところだと思います。そして、カベルネやピノが味の「お約束事」にしばられているとすれば(ヨーロッパで培われた味の「標準形」がある、という意味で)、ジンファンデルは「何でもあり」のワインだと思います。デリケートさや爽やかさは薬にしたくてもありませんが、スパイスの効いたソーセージやハム等の加工肉料理、癖のある鳥獣類、脂身の多いステーキ、とは良く調和するワインです。ただ、チーズにはあまり合わないかと。
さて、私、先日Wikipediaの運営元であるWikimedia Foundationに些少ながら寄付をさせていただきました。私にとっては情報源としてのみならず、娯楽(無聊を慰める、という側面が強いですが)、そして時にはインスピレーションの源ですらあるWikipediaの存続を確かなものにするためにも、微力ながらここで皆様にもサポートのお願いをしたく思います。
ご興味のある方は以下のバナーをクリックしてください。
よろしくお願いします。




Recent Comments