今週末公開されたばかりのStar Trek、久々に公開直後に映画を鑑賞しました。
これはもう解説する必要もないと思いますが、1966年のテレビシリーズから始まり、以来40年以上にわたって新旧のファン層、というよりは「信者」のような人々を新作の映画や同一世界を舞台とした新しいシリーズにより取り込んでいる大フランチャイズの最新作です。
アメリカのヒーローもの、SFものというのにはとかくこういう息の長いばかりでなく、頻繁に新しいコンテンツを同じ作品世界のプラットフォーム上でで製作し、世代を越えたファン層を培っているものが多いです。良い例としてはスーパーマン、バットマンがありますが、この2作品はキャラクターのデビューがそれぞれ1938年、1939年と70年以上前であるにもかかわらず、未だに新作のコミックやテレビシリーズ、映画が製作されている状態です。初期の作品を読んだり見たりした「ファン」がその後クリエイターやプロデューサー、制作スタッフとして作品やキャラクターの基本設定をリスペクトしつつ、「リメイク」にとどまらない、新たな解釈やそれぞれの時代に合わせた要素を盛り込みつつ新しいコンテンツを産み出し、それによりまた作品世界と作品を基盤としたビジネスを広げる新たなネタとファンが産まれる、という拡大再生産の仕組みが出来上がっています。
日本においては漫画、アニメ、テレビ共に新しいものは沢山産み出されますが、こうした継続性のあるキャラクター・作品世界のフランチャイズは希で、「機動戦士ガンダム」が唯一思いつく程度です。
話がそれましたが、今回のこの「スタートレック」はこれまでの同シリーズであった、「TVシリーズの特別番組をお金をさんざんかけて製作した『劇場版』」ではなく、こうした継続・拡大再生産コンテンツにおいてはもはや常套手段と化した観のある「オリジンもの」、皆の知っているストーリー上の時間軸より前の、「どうしてこういうキャラクターと作品が成立したのか」「いろんな作品中の『お約束』の由来は何か」を描く映画です。さしずめ「スタートレック・ビギンズ」ですね。
結論から申し上げれば、この映画は「ビギンズ」ものではありますが「原典忠実主義」には陥っていない、フレッシュなシリーズの「リスタート」とも言える、ある程度このシリーズを見たことのある人には大変楽しめる作品になっています。まったくこのシリーズに縁がなかった人にとっても面白くはあるでしょうが、得られる楽しみと喜びは予備知識のある人にくらべたら激減すると思います。
中心にあるのは若き日のカークとスポックで、この二人がそれぞれコンプレックすを抱えながら成長し、始めは対立しつつも友情を形成していく、という話が根底にはあるのですが、他の主要キャラクターであるマッコイ、スールー、チェコフ、スコッティそしてウーラの各々についてもそれぞれの駆け出し状態を「さもありなん」という感じで描き、そしてこの個性豊かなクルーがどういういきさつでエンタープライズ号に集まったか、カークをリーダーとして活躍する体制がどうして出来上がったかを語っています。
特に「お見事」と思ったのはこうした「オリジンもの」は「説明」に時間を割きすぎてえてして長い上映時間になってしまう傾向があるのですが、見る側にある程度予備知識があることを想定はしている(としか思えません)にせよ、うまく2時間少々にまとめ、「オリジナルストーリー」としての完結性と収束感を見るものに与えてくれた点です。しかも、オリジナルシリーズを面白くしていた様々な要素(アクション、ユーモア、カークをはじめとするキャラクターの「とんち」による一見解決不可能な問題の解決という「頭脳性」)をきちんと取り込んでいます。
もっとも、タイムトラベルとパラドックスそしてオリジナルシリーズのある登場人物をデウス・エクス・マキナっぽく使っている、という問題はあるのですがこういう「ご都合主義」はオリジナルシリーズにもあり、またそれが一種の「味」になっていたところもあるので個人的には不問に付したいと思います(笑)。
映像も、最新の映像技術はもちろん駆使したいますが、もはや「映像」は差別化要因でも何でもない、作品世界を実現するための「ツール」でしかなく、ある意味コモデティになっているので、特に語る必要もないでしょう。「特撮やCGがすごい」という理由だけで映画を見ることはもうありえないわけですし。
むしろこうした作品の場合は、「配役」こそが優劣を決めてしまうのだと思いますが、その点でも実につぼを抑えていたと思います。カーク役のクリス=パイン君は「ボトル・ショック」で演じたキャラと何だかかぶるチンピラっぽさが漂っていましたが、不思議なものでだんだんと「カーク船長」になっていきます。スポック役の人は「ヒーローズ」では有名だそうですが、「若いスポック」としての説得力は十分以上でした。
個人的につぼにはまったのがマッコイ船医役のカール=ウルバン(「ロードオブザリングス」の「二つの塔」と「王の帰還」に出て来たエオメル役の人です)とスコッティ機関長役のサイモン=ペグ(コメディゾンビ映画「ショーン・オブ・ザ・デッド」の主演です)で、前者はオリジナルシリーズのディフォレスト=ケリーが乗り移ったかのような立ち居振る舞い、後者はスコッティのユーモラスな点を増幅した解釈、で与えられた「演じるキャラ」と役者自身の個性を2者2様の形でバランスを取った名演だったと思います。
このマッコイとスコッティ、映画の最後ではオリジナルキャラとして「完成」するのですが、これと比べると主役であるカークとスポックは最後でも「キャラ完成途上」とでもいうべき点にとどまった造形がなされていましたが、それ自体が作品の狙いだと思うので納得です。
最後になりますが、この「スタートレック」、「ファン」であり「リスペクト」を持ちつつも「信者」ではないスタッフが作った「ファンサービス」ではない「ビギンズ」です。J.J. エイブラムズ、さすがです。
但し、続編は作って欲しいような欲しくないような、複雑な気分にはなりましたが…。
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